営業のトークスクリプトは果たして本当に必要なのか?
営業シーンでよく聞くトークスクリプト *。
あなたは「正直いらなくない?」「自分の営業には合わない」と思った事はありませんか?
・・・私はあります。
ですが、今では「あったほうがいい」と断言するようになりました。
今回は、トークスクリプトってぶっちゃけ本当に必要なの?という疑問と向き合って行きたいと思います。
* トークスクリプトとは
営業の台本やトークシナリオと言われる、
いわゆる「カンニングペーパー」のような物です。
当時の私はこう考えていた
セレブリックスに入社する前、私は大手企業を相手にした既存営業をしていました。
そこでは「いかに担当する目の前のお客様に喜んでもらえるか」ということが最重要だったので、当然のようにお客様のもとに足繁く通い、たくさんお話を伺い、カスタマイズした提案を行っていました。
このような営業をしていたからなのか
セレブリックスに入社して新規営業を担当することになると「トークスクリプト」を使って営業することに違和感を覚えてしまいました。
初めて話す人に、しかも電話で、全員に決まったトークをするなんて。
これが当時の私の率直な気持ちでした。
言葉を研ぎ澄ます・・・?
もちろんセレブリックスでは、入社後の研修でトークスクリプトの重要性や意味をしっかりと教わります。その時の私は、新規営業への転身ということもあり「そういうものなのか」と抵抗なく受け入れていました。
しかし、いざ現場で営業をする上で感じたのが前述の通りで、
率直に言えば「喋ることが決まっているなんて窮屈!」でした。
そんなとき、ある人からこんな言葉をもらいました。
『窮屈で当たり前、スクリプトの本質は言葉を削って削って、研ぎ澄ますことにあるんだ』
私は衝撃を受けました。
言葉を削って研ぎ澄ますとはどういうことなのか、意味が分かりませんでした。
そしてそこから、こんな話をしてもらったんです。
映画やお笑いで感動したことはあるか?
その人からふと、『映画を見て泣いたことや、お笑いをみて元気をもらったことはあるか?』と尋ねられました。
・・・少し脱線しますが、私は「フォレスト・ガンプ」という映画が大好きで、定期的に見ては毎回感動しています笑
そんな話をすると、その人は次にこう問いかけてきました。
『もしその映画がアドリブ劇でも、何回みても感動できるか?』
その時、私はこの人が言おうとしていることの意味がわかった気がしました。
映画も舞台もお笑いも、芸術や芸能という「人の心を動かすもの」であり
その裏には必ず「台本」と「練習や稽古」が存在する、その人はそう伝えたかったんだと思います。
その時に、台本と練習のない営業で人の心を動かすのはすごく難しいし、それはお客様に委ねることになってしまうんだなとハッとさせられたのを今でも覚えています。
トークスクリプトの本質
私の思い出話が長くなってしまいましたが…笑
つまり、トークスクリプトをつくることの本質とは「自分が話したいことではなく、相手の心を動かす言葉を磨き込む」ということです。
言われてみれば、ビジネスの世界でも
最高クラスの称賛を得ているスティーブ・ジョブズさんや豊田章男さんがアドリブでプレゼンをするわけがないですよね。
トークスクリプトのかたちは営業スタイルに合わせて最適な形にすればいいと思いますが
少なくとも「言葉を削り磨き込む」という引き算のプロセスは、
眼の前の相手の意思決定に関与し感動を与えることができる仕事である営業という仕事に従事する私達にとっては必須と言えるのではないでしょうか。
もちろん、すでに何年も同じ営業活動を行ってきていて「頭の中にいろんな台本がバッチリ入ってるよ」という方は、ご自身のためにわざわざドキュメント化する必要はないかもしれません。
ですが、新たに営業を始めた方、担当するサービスやプロダクトが変わった方、とにかく何かをして成果を上げたい方にとっては
まず最初に取り組むべきことのひとつと言えるでしょう。
トークスクリプトを使うとこんな効果も
ここまでは、相手の心を動かすために削って研ぎ澄ます「引き算のプロセス」についてお伝えしました。
ですがトークスクリプトを使うことで得られるものはそれだけではありません。
例えば、こういったことが挙げられます。
① 自信を持って営業できる
新人さんに多いケースですが、特に新規営業のインサイドセールスを担当しているとお客様の反応は冷たくて当たり前、全然リアクションをしてくれずに頭が真っ白になってしまうというケースも少なくありません。
そんなとき、トークスクリプトがあるだけで「伝えるべきことが明確にある」ので慌てることなくしっかりと話すことができるようになります。
※これをアドリブでやろうとするのはすごく大変です。
② 行動量を上げられる
営業は時間との勝負でもありますが、忙しい1日の中でどれだけ成果に繋がる行動ができるかというテーマとは切っても切れない関係です。
そんな中、スクリプトがない場合は、毎回相手のHPや記録を見ながらあれやこれやと考えて準備をする時間が長くなったり、前回似たようなケースでどのように話してどうだったのかという記録もなく毎回新たに考えなければいけない、ということが発生します。
もちろん、個社ごとに話す内容を変えることは重要です。ですがその「フロー情報」を「ストック情報」にできるのが、スクリプトの良いところです。 事前に伝える内容が決まっていたり、過去の情報が参照できることで考える時間と行動する時間を切り離すことができ、迷いなく行動量を上げることが出来ます。
③ 改善の質を上げられる
営業活動の成果を上げるためには、一般的にはこのような変数が存在します。
複数の変数が絡めば絡むほど、振り返りや分析が難しくなります。
トークスクリプトを使うことによって、主に「内容」という変数を固定できるので
成果のボトルネックとなっているポイントを特定することができるようになります。
また、スクリプトの中にも「受付の方への会話」「キーパーソンとの接触直後」
「ひとしきり概要を伝えた後」などのフェーズが存在しますので、それらに番号を振り、管理することで、「どこでどのような断り文句をもらうのか」という分析も可能になります。
まとめ
今回は、トークスクリプトってぶっちゃけ必要なの?という疑問と向き合ってきましたがいかがでしたでしょうか。
最後に1つ、この記事を書くにあたって私がびっくりしたことを共有します。
私の上長は未だに、クライアントさんへのちょっとした電話や社内研修のコメントなど
「自分がしっかり伝えたいことがあるとき」はスクリプトを書いていると言っていました。
正直クライアントさんへの電話はまだしも、
社内研修のコメントでもスクリプトをつくるという発想自体がなかったのと
これは経験や役職とは関係のない話なのかもしれないなと改めて思った出来事でした。
トークスクリプトとその練習というのはなかなか表に現れない影の努力ですが、この記事が「営業を受けて感動する人」を少しでも増やすことに貢献できたらと思っています。